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東京地方裁判所 平成6年(ワ)7845号 判決 1996年3月27日

主文

一1  被告らは、原告吉野幾太郎企画株式会社に対し、各自金四六六万五八九二円及びこれに対する平成六年四月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告平山企画株式会社は、原告吉野幾太郎企画株式会社に対し、金四四〇万一八三三円及び内金一九〇万一八三三円に対する平成六年五月三日から、内金二五〇万円に対する同年四月一日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告有限会社明秀エンタープライズに対し、各自金八〇万七五五〇円及びこれに対する平成六年四月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告らは、原告秋山真也に対し、各自金五〇万八四一〇円及びこれに対する平成六年四月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告吉野幾太郎企画株式会社のその余の請求を棄却する。

五  訴訟費用は、原告吉野幾太郎企画株式会社と被告らとの間においては、被告らに生じた費用の四分の三を原告吉野幾太郎企画株式会社の負担とし、その余は各自の負担とし、原告有限会社明秀エンタープライズ及び同秋山真也と被告らとの間においては、全部被告らの負担とする。

理由

第一  判断の骨子

一  仲介報酬の過払金返還請求については、宅建業法に基く建設省告示の趣旨に照らし、被告会社の受領報酬額が過大であり、請求は理由がある。ただし、被告個人は、賃借権譲渡の場合における保証金の扱いに関する解釈が明確でない点もあることから、賃借権譲渡分については責任がなく、サブリース分についてだけ責任がある。

二  漏水物件仲介による損害賠償請求については、物件にそれほどの利用価値の低下が見られず、少なくとも原告会社は自己使用せずに転貸収入を得ており、最終的には賃貸人に有償で返還していること等からみて、被告会社に対する請求は損害の立証がないことに帰する。

三  架空賃借権譲渡の仲介による損害賠償請求については、そのうち譲渡に伴う支出分の被告会社に対する請求部分は理由があるが、賃貸借設定に必要な支出分の請求部分は、被告会社の違法な仲介行為との間に因果関係がないので、理由がない。

(以下、事実認定については、認定に供した主な証拠を当該事実の末尾に略記する。)

第二  過払仲介報酬の返還請求について

一の一 ハイツサトー赤坂ビル物件の賃借権の譲受けの仲介報酬

1  事実関係

(一)  原告がクラブの経営をしており、多くの場合にその店舗についてはその賃借権を元の賃借権者から譲り受け、所有者との間に賃貸借関係を設定する形態を採っていることは争いがない。(事実摘示第二の一1(二)(1)、同2(二)(1))

(二)  ところで、証拠によれば、ハイツサトー赤坂ビル物件は、すでに姜淑子(以下「姜」という。)が鈴木豊有限会社及び小林ビル株式会社から賃借して「満拿」の店名で営業していた一室であることが認められる。

そして原告吉野企画がハイツサトー赤坂ビル物件の造作を被告会社の仲介により元の賃借権者の姜から譲り受けたことは争いがない。右の争いのない事実(事実摘示第二の一1(二)(2)の事実)と《証拠略》によれば、その譲受けの内容は次のとおりであったということができる。すなわち、

(1) 原告吉野企画は、平成元年二月二二日、元の賃借人である姜から同人が賃借中のハイツサトー赤坂ビル物件の賃借権及び造作備品を総額金二七〇〇万円で譲り受ける旨の契約を締結し、同日、手付金として金五四〇万円を姜に支払った。

(2) 姜は、賃借人の鈴木豊有限会社に保証金八一〇万円を交付済みでそれについての返還請求権を有していたところ、その権利をも原告吉野企画に譲渡した。(1)の譲渡残代金二七〇〇万円は、右保証金八一〇万円を含むものであった。

(3) 右譲渡契約においては、さらに、<1>姜は、平成元年三月一日までに、物件所有者(鈴木豊有限会社ら)から借家名義の変更について承諾を得、原告吉野企画名義に変更する手続を完了して、物件を引き渡さなければならない旨、<2>姜が右引渡しを完了すると同時に、原告吉野企画が姜に残金を支払う旨、<3>姜及び原告吉野企画は、仲介人の被告会社に約定による報酬を支払う旨が定められた。

(4) その後、当事者により(3)の約定に従った履行がされ、原告吉野企画は、平成元年三月一日、被告会社に対し、仲介報酬として、譲受総代金の三パーセントに相当する金八一万円を支払った。

(三)  次に、被告会社が右のような賃借権及び造作の譲受けを仲介する場合の報酬一般につき、証拠により、次の事実が認められる。

(1) 被告会社においては、賃借権及び造作の譲渡について仲介をした場合には、その仲介報酬は譲渡人及び譲受人の双方から譲渡総代金(以下、譲渡代金が四〇〇万円以上の場合を想定)の三パーセントずつを受領する扱いとしている。ただし、これに金六万円を加えることもあるし、取引回数の多い顧客には、消費税を内税にしたり減額することもある。

(2) 右の譲渡総代金とは、造作譲渡代金に保証金を加えた金額である。

(3) 右のような譲渡に伴い、賃貸借関係は、新賃借人と賃貸人との間に移行するが、被告会社では、新賃借人と賃貸人との間において、改めて新規の賃貸借関係の発生を確保する書類は作成していない。仲介報酬も、(1)(2)のとおり譲渡人と譲受人間の契約の仲介として取得するだけで、それ以外に新賃借人と賃貸人との賃貸借契約の仲介として計算して取得することはしていない。

(4) 被告会社は、平成元年ころ、サンMビルという物件の賃借権譲渡の仲介をしたが、その際右(2)のように保証金を含めた譲渡総代金の三パーセントを仲介報酬として算出した上請求して取得したことがあった。その際、その譲受人が、保証金まで含めての三パーセントの計算はおかしいとして、社団法人東京都宅地建物取引業協会又は東京都住宅局に申し出た。その結果、違法ではないかとの指摘がされ、被告会社では、自主的に右譲受人に取り過ぎ分(三パーセントの計算に含めた保証金分)を返還した。

2  建物の賃借権譲受けについての仲介報酬額の制限

(一)  宅建業法四六条は、「宅地建物取引業者が宅地建物の売買、交換又は賃借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、建設大臣の定めるところによる(一項)。宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない(二項)。」と定めている。右規定を受け、本件告示は、別紙のとおりの定めをしている。

そして、右宅建業法の規定は、宅地建物取引の仲介報酬契約のうち告示所定の額を超える部分の実体的効力を否定し、右契約の実体的効力を所定最高額の範囲内に制限し、これによって一般大衆を保護する趣旨をも含んでいると解すべきであるから、同条項は強行規定で、所定最高額を超える契約部分は無効であると解するのが相当である(最高裁昭和四五年二月二六日判決・民集二四巻二号一〇四頁)。

(二)(1) ところで、本件告示は、売買又は交換の仲介(第一)、賃借の設定の仲介(第三)及び権利金の授受がある場合の賃貸借の設定の特例(第五)については定めているが、建物の賃借権及び造作の譲渡の仲介については、直接定めてはいない。

しかし、建物の賃借権とりわけ営業用建物(そのうちの一室を含む。)は、それ自体が高額の価値を有し、賃貸人の同意を条件に有償による取引の対象とされることがあることは、周知の事実である。そして、右のような建物賃借権の譲渡の仲介報酬が建物所有権自体の譲渡(売買)や建物の賃借権の設定についての仲介報酬と異なり、法の規制を受けずに、当事者間で自由に決められると解すべき合理的理由は見出し難い。そのような取引当事者となる一般大衆を保護する必要性において両者は同列に扱われるべきだからである。そうすると、建物の賃借権(造作を含む。)の譲渡についての仲介報酬も宅建業法四六条及び本件告示の趣旨に従って一定額に制約されるものと解するのが相当である。

(2) ところで、本件告示第一によれば、売買の仲介においては、売買代金に一定の割合を乗じた額(売買金額が金四〇〇万円を超える場合には、全体の三パーセントに金六万円を加えた額となる。)が仲介報酬の上限を画する額と定められている。

仲介の事例には、諸々のものがあり、たやすく大きな取引を成立させる場合もあれば、反対に苦労ばかり多くてやっとまとまる小さな取引の仲介もあり、仲介の態様は千差万別であろうと思われる。しかし、売買の仲介を依頼する側からすれば、得られるのは不動産の所有権である。したがって、仲介人がそのためにいくら苦労しようとも、依頼者が売買代金として譲渡人に支払う金額以上の金額を、あるいはそれと無関係な金額を別に仲介報酬として支払わされることは不合理であると考えることができる。そこで、譲渡代金を第一の基準とし、その三パーセントに金六万円を加えた金額をもって仲介報酬の上限を画する金額とすることにより、依頼する側(一般大衆)を保護しようとするのが、本件告示第一の趣旨であると解される。

このような見地からすれば、建物の賃借権及び造作の譲渡についての仲介報酬は、最も類似する本件告示第一に定める売買の場合に準じ、建物の賃借権の譲渡代金を基準にして最上限が設けられると解するべきである。本件告示に明文で定める場合に該当しないときにも右のように解するのがむしろ宅建業法四六条の趣旨に適合する。

なお、本件告示第三は、賃借権が初めて設定される場合の仲介報酬について定めるものであり、設定された賃借権の譲渡の場合の仲介報酬の決定の参考にはならない。その意味では、被告会社が前記1(二)(三)のように、賃借権及び造作の譲渡の仲介報酬に本件告示第三ではなく第一を適用する運用をしている点は、基本的には誤っていないということができる。

(三)  次に、前記のハイツサトー赤坂ビル物件の場合のように、建物の一室の賃借権及び造作の譲渡代金中に、保証金返還請求権(の譲渡の対価)が含められる場合に、仲介報酬の上限を画する基準とすべき譲渡代金が保証金を含んだものかどうかが問題となる。

(1) 保証金は、賃借権及び造作を譲り受ける際には必要であっても、賃貸借の終了時に約定に従って賃貸人から賃借人に返還されるものであるから、対価として支払ってもはや返還されることのない純粋の意味での譲受代金とは性質を異にする。

確かに、賃借権の場合、譲渡賃借人にとっては保証金の回収を図ることが重要であり、保証金の額は譲渡代金の最低限を画するものとなるが通例である。したがって、保証金は譲渡代金そのものの一部を形成するようにも見える。しかし、それでも保証金は、譲受人にとっては、譲受時のいわば仮の支出であって、後に返還される性質があることは否定できない。

(2) また、賃借人が賃貸人との間で賃貸借契約を締結する際には、保証金は、本件告示第五によりその仲介報酬の上限を画する基準とはならないこととされている。したがって、賃借権及び造作の譲受時に、当初賃貸借設定時における保証金が譲受代金の構成要素として譲受けについての仲介の報酬の上限を画する基準となるという考え方を採用するとすれば、それは、賃貸借設定時にこれを排除した本件告示第五の考え方と矛盾するに等しい。

(3) (1)で述べたような保証金の特質を踏まえ、他方で仲介報酬の制限の制度の目的が仲介人の業務の多寡、難易を犠牲にしても取引依頼者を保護しようとする趣旨に出たこと、併せて(2)のような本件告示全体との整合性を考えると、仲介報酬の上限の基準となる譲渡代金とは、賃借権及び造作を取得するために不可欠の支出となるものをいい、保証金は、これに含まれないと解するのが相当である。そして、宅建業法四六条の一般大衆保護の趣旨からすれば、右解釈上の所定額を超える契約部分は、無効と解するのが相当である。これまでの被告会社のやり方は、保証金を仲介報酬の上限算出基準額に含める点で相当でなく、1(三)(4)のような指摘の方が正しい態度というべきである。

なお、被告会社は、1(二)(三)のような自己のこれまでの現実の運用(保証金を含めての譲受価格の三パーセント)とも異なり、本訴においては、賃借権譲受時の保証金につき、賃貸借設定の場合における本件告示第三を適用すべきである旨を主張する。しかし、ここでの問題はあくまでも賃借権及び造作の譲受けであり、新たに賃貸人と譲受賃借人との間に賃貸借契約が締結される場合ではない。被告会社の右主張は前提を欠き、採用することができない。

3  ハイツサトー赤坂ビル物件の仲介報酬の制限

2によれば、ハイツサトー赤坂ビル物件の賃借権及び造作の譲渡の仲介報酬は、保証金を除く譲渡代金一八九〇万円の三パーセントに金六万円を加えた金六二万七〇〇〇円の範囲内で定められなければならない。

したがって、それにもかかわらず、被告会社が受けた金八一万円は、金一八万三〇〇〇円の制限超過であり(消費税施行前のケースである。)、これにつき原告吉野企画は、不当利得返還請求権を有する。

4  消滅時効の抗弁

被告会社は、仲介契約は商行為であり、右不当利得返還請求権は五年の消滅時効の適用を受けると主張する。

宅建業法の制限を超えた仲介報酬の不当利得返還請求権については、消滅時効期間は一〇年と解すべきである(最高裁昭和五五年一月二四日判決・民集三四巻六一頁の趣旨参照)。したがって、いまだ消滅時効は完成しておらず、被告会社の右主張は理由がない。

一の二 ハイツサトー赤坂ビル物件のサブリースの仲介報酬(事実摘示第二の一(二)(4)(5)関係)

1  事実関係

事実摘示第二の一(二)(4)前段のとおり、ハイツサトー赤坂ビル物件について、原告吉野企画と右店舗の支配人予定者との間に一か月当たり賃料金六〇万円とするサブリース契約が成立したこと、右契約は被告会社の仲介によるものであり、被告会社は原告吉野企画から仲介報酬として金六〇万円を受領したことは争いがない。

そして、《証拠略》によれば、右支配人は、別の仲介業者に同額の仲介報酬を支払ったことが認められる。

2  サブリース契約の仲介報酬額の制限

本件告示第三によれば、建物賃貸借の媒介(仲介)に関して仲介業者が依頼者の双方から受けることのできる報酬額の合計額は、家賃の一か月分に相当する金額以内とすること、この場合において居住用建物の賃貸借の仲介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬額は、家賃一か月分の二分の一に相当する金額以内とすると定められている。

右1のサブリース契約(経営委託契約)は、賃貸借契約を基本とするものであるから、本件告示第三の適用を受けることになる。しかるところ、本件告示には、賃貸借契約当事者の双方に異なる仲介業者が関与して、その仲介により賃貸借が成立した場合の報酬についての定めはない。しかし、一人の仲介業者が当事者双方のために仲介した場合の報酬の額に制限が定められている以上、仲介業者が当事者双方に各別に介在した場合には、その仲介報酬の合計額は本件告示第三と同様に賃料の月額に相当する額以内とされると解釈するのが相当である。

3  本件における制限

そうすると、ここでは被告会社と支配人側の仲介業者との双方が仲介報酬として合計金六〇万円を受領することができるにとどまる。したがって、特段の事情のうかがわれない右ケースでは、両仲介業者が等分の金三〇万円を受領することができるにとどまると解するべきである(消費税施行前の事案である。)。したがって、原告吉野企画は、被告会社に対し、金六〇万円から金三〇万円を控除した金三〇万円の不当利得返還請求権を有する。

消滅時効の主張が理由がないことは、一の一4説示のとおりである。

二 秀和第一赤坂ビル物件のサブリースの仲介報酬(事実摘示第二の一1(三)関係)

事実摘示第二の一1(三)第一段記載のとおり、原告吉野企画が支配人予定者との間で一か月金一七五万円の家賃でサブリース契約を締結し、被告会社に対し仲介報酬金一六七万七五〇〇円を支払ったことは争いがない。また、弁論の全趣旨及び証拠によれば、支配人側においては別の仲介業者に同額の報酬を支払った事実が認められる。

そうすると、一の二の場合と同様の理由により、被告会社が原告吉野企画から受ける仲介報酬の額は、原告主張どおり金九〇万一二五〇円に制限され、原告吉野企画は被告会社に対し金七七万六二五〇円の過払報酬返還請求権を有する。

三 誠和赤坂ビル物件のサブリースの仲介報酬(事実摘示第二の一1(四)関係)

事実摘示第二の一1(四)第一段記載のとおり、原告吉野企画が標記物件につき支配人予定者との間で一か月金八三万五〇〇〇円(消費税別)の家賃でサブリース契約を締結し、被告会社が仲介報酬として原告吉野企画から金八六万〇〇五〇円を受領したことは争いがない。また、弁論の全趣旨及び証拠によれば、右支配人は別の仲介業者に同額の仲介報酬を支払ったことが認められる。

そうすると、一の二の場合と同様の理由により、被告会社の原告吉野企画から受ける仲介報酬額は原告吉野企画主張どおり金四三万〇〇二五円(消費税込み)に制限され、原告吉野企画は被告会社に対し金四三万〇〇二五円の返還請求権を有する。

四 ラテラッセアベビル物件の仲介報酬(事実摘示第二の一1(五)関係)

1  譲受けの仲介報酬

事実摘示第二の一1(五)(1)前段記載のとおり、原告吉野企画がラテラッセアベビル物件の賃借権及び造作を金二二〇〇万円で譲り受け、賃貸人との間で保証金八〇〇万円とする賃貸借契約を締結し、被告会社がこれを仲介したことは争いがない。

ところで、証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告会社は、賃貸人の株式会社アートプラザセンの代理人として原告吉野企画との間で新規に賃貸借契約書を作成しているものの、賃借権及び造作の譲り受けに伴う仲介料として原告吉野企画から金九〇万円(消費税別)の支払いがあった旨の領収書を発行しているだけであり、しかも右の金九〇万円は賃貸人との新規賃貸借契約書の作成をも含む右仲介の全部の報酬額であること、本物件の場合も含め、賃借権譲受時に賃貸借契約書の作成を併せ行う場合において、原告吉野企画は被告会社に対し一件分として依頼をし、被告会社は一件分として仲介をし、報酬も一件分として計算していることが認められる。

そうすると、原告吉野企画と賃貸人との間の賃貸借契約書は、賃借権及び造作を譲り受けた原告吉野企画が譲受賃借権に係る賃貸借関係を賃貸人との間で引き継ぐことを確認するためのものに過ぎないと推認するのが相当である。そこで、一の一のハイツサトー赤坂ビル物件の場合と同様の理由により、被告会社が原告吉野企画から受けることのできる本物件についての仲介報酬の額は、保証金を除いた譲受代金の三パーセントに金六万円を加えた額(消費税込みで金七四万一六〇〇円)に制限され、原告吉野企画は被告会社に対し金一五万八四〇〇円の返還請求権を有する。ゆえに、その範囲内の金一五万三七八六円の請求は理由がある。

2  サブリースの仲介報酬

事実摘示第二の一1(五)(2)記載のとおり、原告吉野企画が標記物件につき支配人予定者との間で一か月金六三万二五〇〇円の家賃でサブリース契約を締結し、被告会社が仲介報酬として原告吉野企画及び右支配人から各金五九万四五五〇円を受領したことは争いがない。

そうすると、本件告示第三により、被告会社が原告吉野企画から受ける本件物件のサブリースについての仲介報酬の額は、原告主張どおり金三一万六二五〇円に制限され、原告吉野企画は被告会社に対し金二七万八三〇〇円の返還請求権を有する(この点は争いがない。)。

五 丸源23ビル物件のサブリースの仲介報酬

事実摘示第二の一1(六)前段記載のとおり、原告吉野企画が標記物件につき支配人予定者との間で一か月金六五万円の家賃でサブリース契約を締結し、被告会社が仲介報酬として原告吉野企画及び右支配人から各金四八万五四三七円を受領したことは争いがない。

しかし、本件告示第三により、被告会社が原告吉野企画から受ける本件物件のサブリースについての仲介報酬額は、原告主張どおり金三二万五〇〇〇円(消費税込み)に制限され、原告吉野企画は被告会社に対し金一六万〇四三七円の返還請求権を有する。

六 第九ポールスタービル物件の仲介報酬(事実摘示第二の一1(七)関係)

1  譲受けの仲介報酬

事実摘示第二の一1(七)(1)前段記載のとおり、原告吉野企画が第九ポールスタービル物件の賃借権及び造作を金六一五〇万円で譲り受け、賃貸人との間で保証金二八五〇万円とする賃貸借契約を締結し、被告会社がこれを仲介したことは争いがない。

ところで、《証拠略》によれば、譲渡人の有限会社三珠商事は、賃貸人の北辰不動産株式会社に対し金二二八〇万円の保証金を交付済みであったところ、それについての返還請求権も含めて、金八四三〇万円(金六一五〇万円と金二二八〇万円の合計額)で標記物件の賃借権及び造作を原告吉野企画に譲渡したこと、右譲渡については譲受人負担で保証金を金五七〇万円増額することが必要とされたものの、被告会社は、本物件の賃借権及び造作の譲り受けに伴う仲介料として原告吉野企画から金二七〇万円(消費税込み)の支払いを受けているだけであり、しかも右の金二七〇万円は、賃貸人との保証金増額をも含む右仲介の全部の報酬額であること、本物件の場合も含め、賃借権譲受時に賃貸借契約書の作成を併せて行う場合において、原告吉野企画は被告会社に対し一件分として依頼をし、被告会社は一件分として仲介をし、報酬も一件分として計算していることが認められる。

そうすると、原告吉野企画から賃貸人に支払われた保証金の増額金は、従前の賃借権の内容を一部変更する性質のもとにとどまり、従前の賃借権を解消し、新たに賃貸人と原告吉野企画との間で新規賃貸借を設定するようなものではないと推認するのが相当である。そこで、一の一のハイツサトー赤坂ビル物件の場合と同様の理由により、被告会社が原告吉野企画から受けることのできる本物件についての仲介報酬額は、保証金を除いた譲受代金六一五〇万円(消費税込み)から消費税分を引いた金額の三パーセントに金六万円を加えた額(消費税込みでは金一九〇万六八〇〇円)に制限され、原告吉野企画は被告会社に対し金七九万三二〇〇円の返還請求権を有する。ゆえに、その範囲内の金七一万四〇〇〇円の請求は理由がある。

61、500、000÷1・03×0・03+60、000=1、851、262

1、851、262×1・03=1、906、800

2  サブリースの仲介報酬

事実摘示第二の一1(七)(2)(3)第一段記載のとおり、原告吉野企画が支配人予定者との間で一か月金一八〇万((2)の場合)及び金一五四万五〇〇〇円((3)の場合)の家賃でサブリース契約を締結し、被告会社が仲介報酬として原告吉野企画から金一八〇万円((2)の場合)及び金一〇〇万円((3)の場合)を受領したことは争いがない。また、《証拠略》によれば、右支配人は別の仲介業者に同額の仲介報酬を支払ったことが認められる。

そうすると、一の二の場合と同様の理由により、被告会社が原告吉野企画から受ける仲介報酬額は原告吉野企画主張どおり金九二万七〇〇〇円((2)の場合)及び金七七万二五〇〇円((3)の場合)に制限され、原告吉野企画は被告会社に対し金八七万三〇〇〇円((2)の場合)及び金二二万七五〇〇円((3)の場合)の返還請求権を有する。

七 エルム赤坂ビル物件の仲介報酬(事実摘示第二の一1(八)関係)

1  譲受けの仲介報酬

事実摘示第二の一1(八)(1)前段記載のとおり、原告吉野企画がエルム赤坂ビル物件の賃借権及び造作を金八〇〇〇万円(うち保証金二〇二二万円)で譲り受け、賃貸人との間で保証金二四二六万四〇〇〇円とする賃貸借契約を締結し、被告会社がこれを仲介したことは争いがない。

ところで、《証拠略》によれば、譲渡人の株式会社せんやは、賃貸人に対し金二〇二二万円の保証金を交付済みであったところ、それについての返還請求権も含めて、金八〇〇〇万円で標記物件の賃借権及び造作を原告吉野企画に譲渡したこと、右譲渡においては譲受人負担で保証金が金四〇四万四〇〇〇円増額されて金二四二六万四〇〇〇円とされたものの、被告会社は、本物件の賃借権及び造作の譲り受けに伴う仲介報酬として原告吉野企画から金二四〇万円(消費税込み)の支払いを受けているだけであること、しかも右の金二四〇万円は、保証金の増額を考慮しない金額(金八〇〇〇万円)の三パーセントとして算出されていること、本物件の場合も含め、賃借権譲受時に賃貸借契約書の作成が伴う仲介の場合において、原告吉野企画は被告会社に対し一件分として依頼をし、被告会社は一件分として仲介をし、報酬も一件分として計算していることが認められる。

そうすると、ここでの法律関係は、賃借権及び造作の譲渡に伴い保証金の増額があり、その仲介がされたものということができる。そこで、一の一のハイツサトー赤坂ビル物件の場合と同様の理由により、被告会社が原告吉野企画から受けることのできる本物件についての仲介報酬額は、保証金を除いた譲受代金五九七八万円(消費税込み)から消費税分を引いた金額の三パーセントに金六万円を加えた額(消費税込みでは金一八五万五二〇〇円)に制限され、原告吉野企画は被告会社に対し金五四万四八〇〇円の返還請求権を有する。ゆえに、その範囲内の金四七万六六九七円の請求は理由がある。

59、780、000÷1・03×0・03+60、000=1、801、165

1、801、165×1・03=1、855、200

2  サブリースの仲介報酬

事実摘示第二の一1(八)の(2)(3)各前段記載のとおり、原告吉野企画がエルム赤坂ビル物件につき支配人予定者との間で一か月金一五六万円(消費税別。(2)の場合)及び金一二〇万円(同。(3)の場合)の家賃でサブリース契約を締結し、被告会社が仲介報酬として原告吉野企画及び右支配人から各金一五〇万円((2)の場合)及び各金一〇三万円((3)の場合)を受領したことは争いがない。

しかし、本件告示第三により、被告会社が原告吉野企画から受ける本件物件のサブリースについての仲介報酬の額は、原告主張どおり金八〇万三四〇〇円(消費税込み。(2)の場合)及び金六一万八〇〇〇円(消費税込み。(3)の場合)に制限され、原告吉野企画は被告会社に対し金六九万六六〇〇円((2)の場合)及び金四一万二〇〇〇円((3)の場合)の返還請求権を有することになる。

八 ユニ六本木ビル物件の仲介報酬(事実摘示第二の一1(九)関係)

1  賃借権設定の仲介報酬

事実摘示第二の一1(九)(1)記載のとおり、原告吉野企画が標記物件を賃貸人から一か月金四七万四〇〇〇円の家賃で賃借し、被告会社が仲介報酬として原告吉野企画から金九八万五七八〇円を受領したことは争いがない。

しかし、本件告示第三により、被告会社が原告吉野企画から受ける本件物件の賃貸借設定についての仲介報酬の額は、原告主張どおり金四七万四〇〇〇円に制限され、原告吉野企画は被告会社に対し金五一万一七八〇円の返還請求権を有する(この点は争いがない。)。

2  譲渡の仲介報酬

事実摘示第二の一1(九)(2)前段記載のとおり、原告吉野企画がユニ六本木ビル物件の賃借権を造作代金五七〇〇万円で譲渡する旨の契約を締結し、被告会社がこれを仲介し、仲介報酬金二〇〇万円を原告吉野企画から受領したことは争いがない。

しかし、一の一のハイツサトー赤坂ビル物件の場合と同様の理由により、被告会社が原告吉野企画から受けることのできる本物件についての仲介報酬の額は、譲渡代金五七〇〇万円の三パーセントに金六万円を加えた額(消費税込みでは金一八二万三一〇〇円)に制限され、原告吉野企画は被告会社に対し金一七万六九〇〇円の返還請求権を有する。ゆえに、原告吉野企画の請求はその範囲内で理由がある。

九 丸源13ビル物件の譲受けの仲介報酬(事実摘示第二の一1(一〇)関係)

事実摘示第二の一1(一〇)前段記載のとおり、原告吉野企画が標記の物件の賃借権及び造作を金一七五〇万円で譲り受け、賃貸人との間で保証金の定めをする賃貸借契約を締結し、被告会社がこれを仲介し、仲介報酬金八〇万円を受領したことは争いがない。

ところで、《証拠略》によれば、従前の賃借人の有限会社エイチ・アールは、賃貸人の丸源株式会社に保証金一一八七万五〇〇〇円払い込んでおり、これについての返還請求権も含めて譲渡代金二九三七万五〇〇〇円(差引金一七五〇万円)で賃借権及び造作を原告吉野企画に譲渡したこと、被告会社は、賃借権及び造作の譲り受けに伴う全部の仲介報酬として原告吉野企画から金八〇万円の支払いを受けているだけであること、本物件も含め賃借権譲受時に賃貸借設定が伴う仲介の場合において、原告吉野企画は被告会社に対し一件分として依頼をし、被告会社は一件分として仲介をし、報酬も一件分として計算していることが認められる。

そうすると、ここでの法律関係は、原告吉野企画が譲渡代金二九三七万五〇〇〇円をもって保証金一一八七万五〇〇〇円の返還請求権付きの本物件の賃借権及び造作を譲り受け、これを被告会社が仲介したということができる。そこで、一の一のハイツサトー赤坂ビル物件の場合と同様の理由により、被告会社が原告吉野企画から受けることのできる本物件についての仲介報酬の額は、右保証金を除いた譲受代金一七五〇万円の三パーセントに金六万円を加えた額(消費税込みでは金六〇万二五五〇円)に制限され、原告吉野企画は被告会社に対し金一九万七四五〇円の返還請求権を有する。ゆえに、原告吉野企画の請求はその範囲内で理由がある。

一〇 赤坂屋ビル物件のサブリースの仲介報酬(事実摘示第二の一1(一一)関係)

事実摘示第二の一1(一一)前段記載のとおり、原告明秀エンタープライズが標記物件につき支配人予定者との間で一か月の賃料金一〇八万円でサブリース契約を締結し、これにつき被告会社が仲介し、原告明秀エンタープライズ及び右支配人から仲介報酬として各金一〇〇万円を受領したことは争いがない。

しかし、本件告示第三により、被告会社が原告明秀エンタープライズから受ける本件物件のサブリースについての仲介報酬の額は、原告主張どおり金五五万六二〇〇円(消費税込み)に制限され、原告明秀エンタープライズは被告会社に対し金四四万三八〇〇円の返還請求権を有することになる。(争いがない。)

一一 赤坂慶和ビル物件の仲介報酬(事実摘示第二の一1(一二)関係)

1  賃借権設定の仲介報酬

事実摘示第二の一1(一二)(1)記載のとおり、原告秋山が標記物件を賃貸人から一か月金三三万八九四〇円の賃料で賃借し、被告会社が仲介報酬として原告秋山から金八四万七三五〇円を受領したことは争いがない。

しかし、本件告示第三により、被告会社が原告秋山から受ける本件物件の賃貸借設定についての仲介報酬の額は、原告主張どおり金三三万八九四〇円に制限され、原告秋山は被告会社に対し金五〇万八四一〇円の返還請求権を有する。(この点は争いがない。)

2  サブリース契約の仲介報酬

事実摘示第二の一1(一二)(2)前段記載のとおり、原告明秀エンタープライズが標記物件につき共同システムに対し一か月の賃料金七五万円でリース貸しする旨の契約を締結し、これにつき被告会社が仲介し、原告明秀エンタープライズから仲介報酬として金七五万円を受領したこと、共同システムには別の仲介業者がおり、金七七万二五〇〇円の仲介報酬が支払われたことについては、被告会社が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

そうすると、一の二の場合と同様の理由により、被告会社が原告明秀エンタープライズから受ける仲介報酬の額は原告主張のとおり金三八万六二五〇円に制限され、原告明秀エンタープライズは被告会社に対し差額の金三六万三七五〇円の返還請求権を有することになる。

3  消滅時効の抗弁

被告会社は五年の消滅時効を主張するが、一の一4のとおり、採用することができない。

第三  第九ポールスター内店舗の仲介による損害賠償請求について

一  被告会社の債務不履行

1  漏水事故と不告知

証拠によれば、次の事実が認められる。

(一) 第九ポールスタービル物件は、従前は三珠商事が所有権者である北辰不動産から賃借していたもので、被告会社及び被告会社の一〇〇パーセント子会社である訴外平山ビルサービス株式会社(以下「平山ビルサービス」という。)においては、北辰不動産より賃料等の代行受領や管理・メンテナンスの一切を任されていた。右物件においては大雨の際漏水事故がたびたび発生し、三珠商事から被告会社にクレームがついていた。平成元年一一月から一二月にかけて、被告会社の要望に基づき、北辰不動産が金四四二万九〇〇〇円の費用をかけて改修工事を行った。

(二) そのような折りに、被告会社の営業担当従業員の野口秀光(以下「野口」という。)は、原告吉野企画に対し、右漏水事故については告げることなく右物件の賃借権を取得しないかと持ちかけ、同原告がこれを取得することとなった。原告吉野企画は、平成二年二月二二日、三珠商事との間で、右物件の賃借権及び造作備品を金八四三〇万円(このうち保証金は二二八〇万円)で譲り受ける旨の契約を締結し、同年四月二七日、北辰不動産との間で、保証金を五七〇万円増額する賃貸借契約を締結し、合計金九〇〇〇万円を支出した。さらに原告吉野企画は、右物件の内装工事を実施した。(契約締結については当事者間に争いがない。なお、第二の六参照。)

原告吉野企画は、右物件(本件ポールスター内店舗)においてサブリース契約を締結して営業を開始したが、(一)の改修工事にもかかわらず漏水事故はその後も発生した。すなわち、雨が続くと流入経路は不明であるが、本件ポールスター内店舗の場合、天井部分から漏水することがある。客席のソファを守るためにかぶせたビニールシートに水がたまり、絨毯の色がはっきり変わるほど水がしみるような状況になったこともあった。

このような事故は年に一、二度は発生し、漏水事故があるたびに、原告吉野企画は被告会社及び北辰不動産に対しクレームをつけ、北辰不動産は応急工事を行っている。最近では、同社は、平成六年八月にも、排水管工事を実施した。

2  (告知義務違反)

(一) 建物を賃借しようとする者にとって、その建物に漏水事故があったかどうかは重要な事柄であって、これを仲介する業者は、漏水事故のあった物件であることを了知している場合には、一般的にはこれを顧客に告知する義務があるというべきである。

右1の認定事実のとおり本件ポールスター内店舗においては従前から漏水事故が起きていたのであるし、その補修が完全にされ得るかどうかは難しい面もあることに照らすと、平成元年一一月にかなりの金額をかけて北辰不動産が被告会社の意見に従い補修工事をしていた点を踏まえても、被告会社としてはなお過去の漏水の件を原告吉野企画に告知する義務が残存していたものというべきである。そうすると、被告会社が右義務を怠ったことは右認定事実から明らかである(告知したかのような被告大野の供述があるが、野口に提示したというにとどまるので、その野口が不告知をいう以上、大野の供述は意味がないか、採用できない。)から、被告会社には仲介人としての債務不履行があったものというべきである。

(二) これに対して、被告らは、北辰不動産がした補修工事により漏水事故は今後は発生しないと信じたことに過失はないので、不告知であっても債務不履行はないと主張する。しかし、漏水の特殊性からすれば、たやすく補修できないことが多いのであるから、仲介直前に補修工事がされたというだけでは、告知義務がなくなると解するわけにはいかない。

なお、被告らは、原告吉野企画が本件ポールスター内店舗の賃借権を取得した後に発生した三回程の漏水事故はいずれも台風の直撃等による集中豪雨がその原因であり、ビルの構造上の欠陥によるものではないと主張する。台風時に漏水事故が発生しているか定かではないが、建物はそもそも集中豪雨であっても天井から漏水しないのが当然であって、前記認定のとおり毎年漏水事故が起きていた状況では右被告らの主張に理由がないことは明らかである。

二  (損害の有無)

1  譲受代金

証拠によれば次の事実が認められる。

原告吉野企画は、三珠商事に対して、平成二年二月二二日、第九ポールスタービル物件の賃借権及び造作備品の譲渡代金の手付金として金五〇〇〇万円を、同年四月二七日同残金として金一一五〇万円を支払った。

2  内装工事代金

(一) 原告吉野企画が、内装工事費として、訴外株式会社ジャブに対し、右物件の賃借権取得後の平成二年五月一日及び同年六月一二日に各金一三五〇万円を、同年六月三〇日に金三〇〇万円を支払った旨を記載した契約書及び領収書がある。

(二) 被告らは、右契約書(甲二八の一・二)には工事の具体的内容を示す図面や仕様書の添付がなく、その成立には疑義があると主張し、特に領収書については東京都内の局番が三桁から四桁に変更されたのは平成三年一月一日以降であるにもかかわらず、平成二年に作成されたはずの右領収書には四桁の電話番号が書かれている旨を指摘する。もっともな指摘であり、結局のところ、原告吉野企画が内装工事代金として合計金三〇〇〇万円を支出したとの事実までは認められないと判断する。

3  北辰不動産との賃貸借の解消

証拠によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告吉野企画は、平成五年八月ころから第九ポールスタービル物件の賃料の支払いを延滞した。そのため北辰不動産から明渡しの調停を申し立てられ、平成七年一月一四日、東京簡易裁判所において原告吉野企画と北辰不動産との間で左記の内容の調停が成立した。

(1) 北辰不動産と原告吉野企画は平成七年一月三一日付けで第九ポールスタービル物件の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を合意解除する。

(2) 北辰不動産は、本件賃貸借契約の保証金返還債務金七四八万七六九七円(差入金二八五〇万円から、本件賃貸借契約の未払賃料・管理費金一三五四万五八八二円、電気水道代金の立替金二九四万五七五一円及び約定による賃料七か月分金四五二万〇六七〇円の償却分を差し引いた金額)の返還義務があることを認める。

(3) 北辰不動産は、原告吉野企画から右物件の全ての造作を金一〇五〇万円で買い取る。

4  本件ポールスター内店舗の賃借権の価値の低下の有無

(一) 原告吉野企画は右1のとおり、平成二年二月に金六一五〇万円で譲り受けた標記の賃借権(造作を含む。)を、右3のとおり約五年後の平成七年一月に金一〇五〇万円で北辰不動産に買い取らせている。しかし、右賃借権の価値が右の差額だけ減少したと考えるのは相当でない。その理由は、次のとおりである。

右3のとおり、北辰不動産は、原告吉野企画が平成五年八月から賃料を支払わないので、そのことを理由に賃貸借契約を解除して明渡しを求めたのであるから、賃貸人北辰不動産との関係で右賃借権は消滅して無価値となり、その上で互譲の趣旨で造作を含めて一定の金員で買い取ってもらう調停が成立した可能性がある。したがって、右賃借権が存続しているとした場合における平成七年一月ころのその価値が金一〇五〇万円と考えるのは相当でないのである。

(二) また、証拠によれば、右の調停においては、従前原告吉野企画からサブリースを受けていた金栄淑が北辰不動産と直接一か月当たり賃料金一一〇万円で本件ポールスター内店舗を賃借する旨も合意された事実が認められる

したがって、本件ポールスター内店舗は、平成七年一月における利用価値の高いものであるといえる。また、従前の転借人である金栄淑が右のように利用の意欲を明らかにしていることからすれば、漏水事故のために金栄淑が平成五年八月ころから本件ポールスター内店舗を利用するつもりがなくなっていたとは考えられない。

5  損害額

(一) 右4のとおり、本件ポールスター内店舗の利用価値が低下しているとはたやすく認めがたい。漏水事故があったのは事実であるが、むしろそれが本件ポールスター内店舗の利用度にそれほど影響を及ぼしてはいないと推認されるのである。

原告としても、平成二年二月に右店舗賃借権を譲り受けた後、一か月一八〇万円及び一五四万五〇〇〇円の賃料によるサブリース契約により、自己が北辰不動産に支払う一か月約六〇万円の賃料との差額の利益を得ていたのである(第二の六2)。

(二) しかも、前記調停において、原告吉野企画は、北辰不動産との間で、その賃貸借契約及び本件ポールスター内店舗に関し調停条項に定める外一切の債権債務の存しないことを確認している。

漏水事故については、原則として店舗所有者が賃借人に対して補修等の責任を負うべきであるところ、原告吉野企画は、右のとおり北辰不動産に対してはもはや金一〇五〇万円の造作費以外の責任を追及しない旨を約しているのである。

(三) 右(一)のとおり、賃借権の低下は明らかではなく、また、右(二)のとおり賃貸人には金一〇五〇万円の造作を買い取って貰う以外に責任を追及しないとしていることからすれば、賃借人の原告吉野企画は、賃貸人ではない仲介人の被告会社に対してもはや右以外の賠償を請求するだけの特段の損害は見当たらないというべきである。

すなわち、原告吉野企画が本件ポールスター内店舗の賃借権の譲受時に過去に漏水事故があったことを被告会社から知らされていなかったものの、それによる被害発生の事実が認められないのである。

6  まとめ

以上のとおり、原告吉野企画には損害が生じているとは認められないため、被告会社に対する漏水物件の仲介による損害賠償は認められない。

第四  本件シャトレーイン内店舗の仲介に伴う損害賠償請求について

一  仲介行為

証拠によれば次の事実が認められる。

1  被告会社専務取締役安部恵二(以下「安部」という。)は、平成三年一一月ころ、訴外株式会社北商の中根より、本件シャトレーイン内店舗の仲介の件で、本件シャトレーイン内店舗の所有者である高野敏男商店の営業企画本部長山崎利元を紹介された。右中根及び山崎の話では、高野敏男商店が早くテナントを見つけたいこと、本件シャトレーイン内店舗の保証金は三五〇〇万円で同種物件に比べると大変安いとのことだった。

ところで、新規賃貸借の仲介の場合には仲介報酬として一か月分の賃料相当額しか入らないことから、被告会社は、本件シャトレーイン内店舗には真実は賃借人がいなかったにもかかわらず、イワナガ興産という賃借人があるように見せかけて、新賃借人とイワナガ興産との間に賃借権及び造作譲渡契約を締結させたとの外形を装い、保証金を含めた額の三パーセントを仲介報酬として受領しようと計画した。これに基づき野口が原告吉野企画に対し、本件シャトレーイン内店舗の賃借権を取得しないかと持ちかけたところ、原告吉野企画が応じて本件シャトレーイン内店舗の賃借権を取得することになった。

2  原告吉野企画代表者の吉野明秀、イワナガ興産代表者小平及び高野敏男商店の専務と称する者が、平成三年一二月六日、被告会社の事務所に集まり、本件シャトレーイン内店舗について、吉野企画とイワナガ興産との間で造作譲渡契約を、吉野企画と高野敏男商店との間で賃貸借契約を締結した(これらの契約の効力については後述する。)。原告吉野企画は、イワナガ興産に対し造作譲渡代金二〇〇万円を、高野敏男商店専務と称する者に対し保証金三五〇〇万円及び前家賃五〇万円を、被告会社に対し仲介報酬一〇〇万円を支払った。

二  賃借権譲受仲介の不存在

右一の認定事実からすると、第一に、被告会社は、イワナガ興産を架空の旧賃借人として原告吉野企画に右賃借権の譲受けを仲介したのであるが、もとよりこれにより譲受けの効力が生じるものではない。被告会社が、右賃借権譲受けに関して仲介業者としての善管注意義務に違反し債務不履行責任を負うことは明らかである。

三  賃貸借の成否

1  仲介の問題点と賃貸借との関係

右二のとおり、被告会社の仲介行為に問題があるものの、原告吉野企画は、仲介の態様に特別の意味を有していたことはうかがわれず、高野敏男商店から本件シャトレーイン内店舗を賃借する意思は有していたものと認められる。したがって、被告会社に右仲介における債務不履行があるとはいっても、賃借権譲渡を賃貸借の設定の仲介に是正すれば足り、当然に原告吉野企画と高野敏男商店との賃貸借の設定の仲介まで否定しなければならないものではない。

2  賃貸人の事情

ところで、本件では、右一の認定からうかがわれるように高野敏男商店側の担当者の権限が問題となる。そこで、高野敏男商店の専務と称していた者による契約締結行為の効力等を検討する。

証拠によれば、さらに次の事実が認められる。

(一) 前記一の契約締結の際、高野敏男商店専務と称する者は、原告吉野企画に対し、本件シャトレーイン内店舗の鍵を渡すとともに、高野敏男商店のゴム印と印鑑があらかじめ押された領収書を持参してこれを吉野明秀に手渡した。

また、高野敏男商店専務と称する者は、本件シャトレーイン内店舗の上階部分にあるホテル関係の荷物の整理ができていないので、これをしばらく置かせてほしいと要望し、吉野企画は、支配人が見つかるまではかまわないので「しばらくの間ならいいです。」と答えた。

なお、右契約の際、被告会社の安部も野口も、高野敏男商店の代表取締役である高野敏男の意思を改めて確認することはしなかった。

(二) 平成四年一月に入っても、本件シャトレーイン内店舗内は荷物が整理されていないままになっており、それから鍵が誰かによって変えられてしまい、原告吉野企画は本件シャトレーイン内店舗内に入ることができなくなった。ただし、原告吉野企画も高野敏男商店に対し平成四年一月分の賃料しか支払っていなかった。吉野明秀からの連絡を受けた野口が高野敏男商店の事務所に行くと、高野敏男商店専務と称していた者はおらず、事務所の者に右賃貸借契約の話をしても「知らない。」と言われた。ただし、その際、高野敏男商店は、野口に対し、「あと一五〇〇万円を積めば貸してやる。」と言ったので、原告吉野企画は、納得できないもののこれ以上不良物件と関わりたくないとの考えから、一五〇〇万円を出して賃借権を確保するとともに新たに賃借人を探して賃借権を譲渡してしまいたいと野口に要請した。その前後に高野敏男商店が原告吉野企画に対し、四二〇〇万円を支払うから右賃貸借契約を白紙にしてほしいと求めていたこともあったが、原告吉野企画は、ヤマビシという会社との間でリース契約をする方向で話をすすめていたので断ったということがあった。

(三) 野口は、その後何か月か譲受賃借人を探したが、見つからなかった。そのうちに高野敏男商店は平成五年三月三〇日に破産宣告を受け(宣告の日は訴状によった。)、本件シャトレーイン内店舗は破産管財人によって占有されてしまい、原告吉野企画はその賃借権を確保することはできなくなった。

3  賃貸借の成立

(一) 右2の事実に甲一九をも総合すると、次のように推認される。高野敏男商店は平成三年末または平成四年初めのころに、同社に専務と称する者を受け入れた。しかし、その者は、高野敏男商店の登記された代表取締役高野敏男と十分な連絡を取らずに高野敏男商店名で本件の賃貸交渉を担当した。

原告吉野企画から交付された三五〇〇万円の保証金は右の専務と称する者の手にとどまり、高野敏男本人にまでは渡らなかった。そのため、野口から鍵の件の問い合わせがあって右専務と称した者の仕業と気付いた時点では、高野敏男本人又はその意向を受けた同商店の権限のある者は、本件賃貸借を否定したかった。しかし、専務と称することを許し、高野敏男商店代表者名義の預り証、領収証が発行されている以上、少なくとも表見責任を負わざるを得ないとの判断もあり、高野敏男は、保証金一五〇〇万円を追加して貰えれば、賃貸借を認めるとか、四二〇〇万円で解約できないかとの申入れをした。

(二) 以上のように推認されるのであり、原告吉野企画は、高野敏男商店との間に賃貸借関係を生じさせたのである。したがって、野口が高野敏男商店の代表者に賃貸意思を確認しなかったことは、格別の不都合な結果に結び付かなかったものである。

そうである以上、賃貸借関係発生後に原告吉野企画がシャトレーイン内店舗の鍵を変えられて事実上賃借権を確保することができなくなった場合においても、それは、基本的には原告吉野企画が賃貸人の高野敏男商店と交渉して解決すべき事柄というべきなのである。

四  損害と被告の責任

以上の一から三の事実と判断を踏まえると、次のようにいうことができる。

1  原告吉野企画がイワナガ興産に支払った二〇〇万円は全く無用な支出をさせられたものであり、その原因は、イワナガ興産と並んで被告会社にある。

2  次に原告吉野企画は本来賃貸借設定の仲介をして貰えばよく、その場合に被告会社に支払う仲介報酬の上限は一か月分の家賃の金五〇万円である。よって、原告吉野企画は仲介報酬として五〇万円を超える部分(一〇〇万円から五〇万円を引いた五〇万円)の不要な支出をさせられたものであり、それだけの被害を被ったことが明らかである。

3  右二者に対し、原告吉野企画が高野敏男商店に支払った保証金三五〇〇万円は、原告吉野企画がシャトレーイン赤坂内店舗の賃借権を取得しようとした以上、当然の支出であり、それ自体は損害という性質を有しない。その後原告吉野企画は、鍵を変えられてシャトレーイン内店舗を利用することができなくなったがその場合でもまずは原告吉野企画において家主(高野敏男商店)と交渉し賃借権の回復を図るべきが当然である。本件においては偶々高野敏男商店がその後に破産宣告を受ける等したことから、原告吉野企画が賃借権を確保することが事実上できなくなって損害を被ったものであるが、それは、いわば偶然のことである。観方を変えて言えば、被告会社の仲介行為と原告吉野企画の損害との間に法的な因果関係がないというべきである。

4  よって、原告吉野企画は、被告会社に対し、シャトレーイン内店舗に関し、右1及び2の合計二五〇万円の限度で損害賠償請求権を有するがこれを超える請求権は有しない。

第五  被告平山及び同大野に対する損害賠償請求について

一  被告平山及び同大野の被告会社内における地位

稟議規定及び被告大野の陳述書並びに被告大野本人尋問の結果によれば、被告平山は、被告会社社長として固定資産の購入や人事等被告会社の組織や基本的運営に関わる事項について決裁権を有し、被告大野は、取締役赤坂支店長として赤坂支店の業務全般を統括し、赤坂支店の日常業務について決裁権を有していたものと認められる。

二  仲介報酬の受領と個人責任

1  賃借権譲受けの仲介報酬に係る請求

旧賃借人が新賃借人に対して保証金返還請求権を含めて建物賃借権を譲渡し、これについて仲介がされた場合において、その仲介報酬の額は、宅建業法及び本件告示に基き、右保証金の額も含めた譲渡代金(金四〇〇万円以上とする。)の三パーセントプラス金六万円以内に制限されるというのが被告会社の考え方であり、運用実績である。この点は前示のとおりである。これに対し、当裁判所は、第一の一で述べた理由により保証金を除いた譲渡代金(金四〇〇万円以上とする。)の三パーセントプラス六万円以内に制限されるべきであると判断するものである。

その限りで、被告会社は、前示のとおり、原告吉野企画から得た賃借権譲受けの仲介報酬(一の一、四1、六1、七1及び九)の過大利得分を返還すべきである。

ところで、右のような場合について本件告示は明確な規定を設けていない。そして、営業価値の大きな店舗賃借権における保証金の高額さや経済的役割に照らすと、被告会社のような考え方も経済的な観点からすれば、あながち理解できないではない点を含む。そして、確定した明確な行政通達等が発出されているとの証拠もない。これらの事情を総合すると、被告平山及び同大野の右の点に関する措置が直ちに違法と断ずることにはいささか躊躇を覚えるのであり、同被告らに未だ右の点についての不法行為責任を生じさせるものではないと考える。

なお、ユニ六本木ビル物件の賃借権譲渡の仲介報酬(八2)の額は、単に本件告示に反したもので、その理由は、性質上、被告平山の方針に基づく日常的なものとは思われず、担当者の単なるミスである可能性は否定し難い。そして、他に右措置が被告平山及び同大野による何らかの過失に基づくものと認めるに足りる的確な証拠はない。したがって、この分についても右被告両名の個人責任は生じないというべきである。

2  賃貸借設定の仲介報酬に係る請求

賃貸借設定(本件におけるサブリースも含む。)の仲介において、賃貸人側と賃借人側とに別々の仲介業者が介在した場合、その一方の仲介人が受ける報酬は、一か月の賃料の半額以内に制限される。以上は、本件告示(第三)に明定されていることではないが、その趣旨からみてかなり明確に推し測ることのできるところである。というのは、一仲介人が依頼者双方から受けることのできる報酬の合計額が賃料の一か月分以内とされている(本件告示第三)からである。そして、証拠によれば、被告平山及び同大野は、右に違反した運用を会社の方針として容認していたものと認められる。

このことからすると、被告平山及び同大野は、右過大報酬の受領分について義務としてこれを返還すべき責任を負うというべきである。

これに該当する仲介報酬は、ハイツサトー赤坂ビル物件のサブリース(一の二)、秀和第一赤坂ビル物件のサブリース(二)、誠和赤坂ビル物件のサブリース(三)、ラテラッセアベビル物件のサブリース(四2)、丸源23ビル物件のサブリース(五)、第九ポールスタービル物件のサブリース(六2)、エルム赤坂ビル物件のサブリース(七2)、ユニ六本木ビル物件の賃借権設定(八1)、赤坂屋物件ビル物件サブリース(一〇)、赤坂慶和ビル物件の賃借権設定(一一1)・同サブリース(一一2)についてのものである。その合計は金五九八万一八五二円で、そのうち、原告吉野企画関係が金四六六万五八九二円、同明秀エンタープライズ関係が金八〇万七五五〇円及び同秋山関係が金五〇万八四一〇円である。

三  本件シャトレーイン内店舗の仲介と個人責任の有無

被告会社がイワナガ興産を架空の賃借人として原告吉野企画に賃貸借契約を締結させた点については、仲介業者としての善管注意義務に違反するばかりか、被告会社による積極的な不法行為にも該当するものと認められる。

しかし、このようなことを被告会社が被告平山の提示に基づき日常的にしていたとの事実を認めるに足りる証拠はない。また、これにつき、被告平山及び同大野が個別具体的に指示しあるいは関与していたことを認めるに足りる証拠もない。

したがって、冒頭の架空賃借人からの賃借権の譲渡の仲介について、被告平山や同大野に過失があったとまではいえず、この点についての原告吉野企画の請求は認められない。

第六  結語

以上によれば、原告らの被告会社に対する請求は、合計金七八八万三六八五円の限度における過払報酬返還請求(原告吉野企画が金六五六万七七二五円、同明秀エンタープライズが金八〇万七五五〇円及び同秋山分が金五〇万八四一〇円)、原告吉野企画の本件シャトレーイン内店舗仲介に伴う架空賃借人への支払損失金二〇〇万円及びこれによる過払報酬金五〇万円の損害賠償請求について理由がある。また、被告平山及び同大野に対する請求は、過払いのサブリースの仲介報酬の返還を被告会社とともに求める部分につき原告吉野企画分が金四六六万五八九二円、同明秀エンタープライズ分が金八〇万七五五〇円及び同秋山分が五〇万八四一〇円について理由がある。なお、被告会社に対する賃借権譲受け仲介報酬の返還請求については支払いの催告のあった日の翌日以降の、その余の請求については不法行為に該当するということができるので行為の日よりも後である原告ら請求の日以降の、各遅延損害金請求も理由がある。そして、その余の請求は理由がない。よって、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を適用し、仮執行の宣言についてはその必要がないのでこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡光民雄 裁判官 松本清隆 裁判官 平出喜一)

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